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“迷宮” 2003年「尖」京都市美術館別館
*画像内の作品をクリックすると、拡大図を見ることができます。
98年から発表している、国宝源氏物語絵巻の「柏木一」、「柏木二」をモチーフにした“迷宮”シリーズ。国宝源氏物語絵巻は、空間表現として等角投影法的または斜投影法的な明解な遠近法を用いているにもかかわらず、建物全体を画面内に収めないため、建物の構造が理解しにくく、稜線同士の位置関係が曖昧になり、画面内が幾何学平面に分割されているように見えたり、稜線の前後、上下関係が逆転して見えたりと、セザンヌやマチスの絵画を彷佛とさせるようなスリリングな画面構成を持っています。それは、やはり絵具の剥落によって“三次元空間の二次元空間上における再現”という秩序に破綻が生じたことも大きいのでしょうが、構造がほぼ理解できるまで画面内に建物を入れてしまう他の王朝絵巻ではあり得ないことのように思えます。
私が国宝源氏物語絵巻に魅かれるのは、他の源氏絵や王朝絵巻が、室内や調度を背景や小道具といった画中の人物の補助的な役割に留めているのに対し、人物や建物、庭、調度等画面内の構成要素が互いに緊密に関係し合い、ひとつの身体を形成しているように見えるからです。
従って、私の国宝源氏物語絵巻をモチーフとしたシリーズは、テキストである「源氏物語」とは直接関係はなく、この絵巻を絵画=身体としてどう扱ってゆくかが主題となっています。「柏木一」では画面の一部をトリミングしたものを、「柏木二」では画面全体を180度回転移動させた上下逆のモチーフと共に反復構成しています。
