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私が仏教壁画に興味を持ったきっかけは、法隆寺金堂の飛天の壁画20面を観たことに始まります。二体の飛天をモチーフに、全く同じ構図を繰り返し複製し、配色を変えただけの20面。しかし、それは千数百年の年月を経て、それぞれ異なる箇所が剥落し、1点1点全く違った表情を持つ作品に変貌していたのです。同じ構図が様々なヴァリエーションを持つ面白さ。また、部分的な剥落は、絵画の図と地の等質化や反転といった空間の変容を引き起こします。静謐でありながら、キュビスムをはじめとした現代絵画の持つカタストロフィックな空間を観るような快感。そんなところに魅せられたといえるでしょう。いいかえれば、千年以上も前の作品がアップデートして、現代に立ち現れたような感覚です。
その後、私は国立博物館の西域美術展を観て衝撃を受け、シルクロードの石窟寺院を巡ることになります。制作では、パネルやキャンバスに石膏を厚く塗って、壁画のようなテクスチュアの作品に着手。最初はイメージそのものも手描きによっていたのですが。自分が手作業で表現したいのは剥落や変色、ひび割れなどによる絵画イメージの“破壊”であることに気付き、イメージそのものはシルクスクリーンによる複写に切り替えました。複製イメージを、反復とシンメトリーによって構成した作品の最初の発表が、この個展ということになります。
ここには、仏教という日本の伝統文化に深く根ざしているが故の、埃を被ったイメージを取り払うべく、宗教美術を図像的解釈や教義にとらわれないコンテンポラリーなボキャブラリーとして捉え直すことで、イメージの持つ本質に迫ろうとする試みがあります。
